社会学中級の基礎文献は多数あるが、この授業では「考え方の基本を学ぶ」という趣旨から、まずは、「社会学的想像力」について考えたい。「社会学的想像力」は、戦後アメリカの代表的な社会学者 ライト・ミルズ(Wright Mills)による言葉。 「個人的問題をたえず公共の問題に読み替え、公共の問題をそれがさまざまの人びとにとっていかなる人間的意味をもつのか、という形に翻訳すること」、「熟知している自らの型にはまった日常生活を新たな目で見直すために、当たり前のことがらから離れてものごとを考える」ことがエッセンスである。
このような想像力を養うことによって、個人的なもののなかに社会的なものを見出し、また個別的なもののなかに一般的なものを見出す機会を得ることができる。


「社会学的想像力」とは、個々人のあるいは集団の、心のあり方の問題である。いつの時代にもそれはさまざまな形で制限されており、私たちはこの意味でも自由ではない。しかし、それは変えることが出来る。それはある個人の覚醒(気づき)から始まる。そして、自らと異なる場所にある他者に共感する集合的実践につながっていく可能性を秘めている。こうした能力をそれぞれが互いに高めあうことが、この授業の最初の目的です。

第一回目の宿題では、まずミルズの文章をよく読んだ上で、「社会学的想像力を行使するとはどういうことなのか?」と自問してください。歴史の中や自分の(身の回りの)人生の経験を振り返って、「個人的・私的と思われていたことを公共的な文脈で考え直す」、「歴史の中での自分の役割を再発見する」ことに成功した事例を探し出してください。マルチン・ルーサー・キングやガンジーの事例が典型です。これを調べるのもよし。他の事例を探し出すのもよし。

あるいは、「私たちはこういうことについて、新しい社会学的想像力を切り開く必要がある」というテーマを探して報告してくれてもよいです。いずれにせよ、なかなか難しい宿題です。

下のウェブサイトも参考になります。
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Sociological_Imagination
Mills, C. Wright, The Sociological Imagination, New York:Oxford University Press, 1959 [2000]  →リンク1  →リンク2
ライト・ミルズ『社会学的想像力』、紀伊國屋書店


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