アクティブラーニングは大学における学生の積極的な参加を促す授業・学習方法として期待されています。同時に、今後の社会を担う若者たちに求められる能動的な問題解決能力を涵養する機会としても効果を持つように思われます。
元来、大学は会社で役立つ人材を提供するだけの機関ではありません。社会との緊張・相互関係の中で固有の教育目標を形成しています。しかしアクティブラーニングは、両者を有機的にリンクする可能性を持つように思われます。
本シンポジウムでは、大学が行おうとする教育と、社会が求める人材について、それぞれの立場から現状を確認し、アクティブラーニングがその間をどのように結びつけられるのかを考えます。
文部科学省現代GP採択取組である「ICTを活用した新たな教養教育の実現−アクティブラーニングの深化による国際標準の授業モデル構築−」のシンポジウムを開催いたします。
現在、東京大学はその教育ビジョンに「タフな東大生」というキーワードをかかげています。ここでタフとは、健康・体力のみならず、社会的なコミュニケーションの場におけるたくましさを意味しています。実際、グローバル化の時代を迎え、教養、専門知識に加え、新たな課題に果敢に挑戦し、幅広い分野・文化を横断していくコミュニケーション力や柔軟な思考力を持った学生の育成は、東京大学のみならず、現代の大学教育に広く課せられた課題でしょう。そして、このような課題に対して、学生の能動的な問題解決能力を涵養する授業・学習方法としてアクティブラーニングに大きな期待が寄せられています。
ところで、進展する国際化や情報化など社会の大変動に対応しなければならないのは大学だけではありません。とりわけ、日本の会社は大きな波にさらされ、そこでの人々の働き方は、かつて無い変革を迎えているように思われます。会社で新たな課題に向かい合わねばならない若者にとっても、「タフ」であることが求められているといえるでしょう。
ただし、ここで注意せねばならないことは、大学は、歴史的にみても、また理念的にも、単に社会で必要な人材を養成する機関ではなかったということです。それぞれ固有の目的を持ちつつ、緊張の中で、相互作用する関係にあるべきはずです。
そこで、今回のシンポジウムでは、こうした関係を再確認しつつ、ゲスト講師のお話から、これから大学教育が育てようとする学生像と、現在の日本社会で働く若者の姿を併置させた上で、大学教育が目指すもの、さらに、そこでのアクティブラーニングが持つ可能性についてディスカッションを通して迫ります。また、2年半の現代GPによるICTを活用したアクティブラーニング型授業実践の成果を報告するとともに、アクティブラーニングのさらなる展開への期待と課題について議論します。
学生の主体的な参加を意図するアクティブラーニング型授業の実施は、講義型の授業とは異なる工夫や努力が求められる取組みです。その労力にどんな意義があるのか、再度、アクティブラーニングを問い直す機会となればと考えております。
東京大学 現代GP シンポジウム 2010 - 大学・アクティブラーニング・社会 -
主催:東京大学 教養学部、大学院情報学環、大学総合教育研究センター
共催:東京大学 教養学部附属教養教育開発機構
日時:平成22年2月17日(水)14:00-17:30 13:30-17:00
場所:東京大学 駒場Tキャンパス 18号館ホール
東京都目黒区駒場3-8-1
京王井の頭線「駒場東大前」下車徒歩5分
・本シンポジウムの様子をビデオ・写真撮影し、広報・講演資料・現代GP報告書などに用いられる場合がありますことをご了承ください。
申込方法:終了しました。
・申込みウェブフォーム
・参加無料、ただし事前登録制(定員200名 / 残席があれば当日参加も可能です)
※開始時間が30分繰り上げになりました。 | |
13:00-13:30 | 受付開始 |
13:30-13:40 | 挨拶 |
東京大学 総長 濱田純一 | |
13:40-13:45 | 趣旨説明 |
13:45-14:15 (30分) | 講演:タフな東大生はどこから生まれるのか |
吉見俊哉(東京大学大学院情報学環 教授) | |
14:15-15:00 (45分) | 講演:20代の迷走〜変わる会社、変わるキャリア〜 |
豊田義博(リクルート ワークス研究所 主任研究員) | |
15:00-15:20 (20分) | 講演:大学・社会・アクティブラーニング |
中原淳(東京大学 大学総合教育研究センター 准教授) | |
15:20-15:30 (10分) | 休憩 |
15:30-16:00 (30分) | 現代GPの成果報告 |
16:00-17:00 (60分) | パネルディスカッション |
パネリスト:豊田義博 | |
パネリスト:吉見俊哉 | |
パネリスト:中原淳 | |
パネリスト:永田敬(東京大学大学院総合文化研究科 教授) | |
パネリスト:斎藤希史(東京大学大学院総合文化研究科 准教授) | |
コーディネーター:山内祐平(東京大学大学院情報学環 准教授) |
吉見俊哉 (Shunya Yoshimi) 東京大学大学院情報学環 教授 東京大学新聞研究所助手(1987年)、助教授(1990年)、東京大学社会情報研究所教授(2000年)等を経て、組織統合により2004年より現職。2006年から2008年まで情報学環長。専門は都市論、文化社会学(カルチュラル・スタディーズ)。 |
豊田義博 (Yoshihiro Toyoda) 株式会社リクルート ワークス研究所 主任研究員 東京大学理学部卒。株式会社リクルート入社後、日本を代表するビッグビジネスから中小・ベンチャーまで、数百社におよぶ企業の新卒採用戦略、広報計画業務 に制作ディレクターとして長く従事する。その後、『リクルートブック』『ガテン』等の就職情報誌の編集業務に携わり、『就職ジャーナル』『リクルートブッ ク』『Works』編集長を歴任。現在は研究員として、組織・人材マネジメントの未来形、新たな「人と組織の"いい関係"」、個人の就業意識や価値観の変 化などを探索している。 著書に『戦略的「愛社精神」のススメ』(2009年4月 プレジデント社)『「上司」不要論。』(2007年11月 東洋経済新報社)『新卒無業。―なぜ、彼らは就職しないのか』(共著/2002年4月 東洋経済新報社)がある。 |
中原淳 (Jun Nakahara) 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授 東京大学大学院 学際情報学府准教授(兼任)。北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部、大阪大学大学院 人間科学研究科をへて、文部科学省メディア教育開発センター助手、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学 大学総合教育研究センター講師、2006年より現職。2003年、大阪大学より博士号授与。 「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人々の学習・成長・コミュニケーションについて研究している。専門は人材発達支援論、職場学習論、学習環境デザイン。共編著・共著に「企業内人材育成入門」「ダイアローグ 対話する組織」(ダイアモンド社)など多数。研究の詳細は、 Blog:NAKAHARA-LAB.NET(http://www.nakahara-lab.net/)。 |
永田敬 (Takashi Nagata) 東京大学大学院総合文化研究科 / 教養学部附属教養教育開発機構 教授 1954年大阪生まれ.1982年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了(理学博士).同大理学部助手,助教授,教養学部助教授,岡崎国立共同研究機構分子科学研究所助教授を経て1998年より現職.専門は分子科学 |
斎藤希史 (Mareshi Saito) 東京大学大学院総合文化研究科 准教授 1963年千葉県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程(中国語学中国文学)中退。東京大学大学院総合文化研究科准教授。専門は中国古典文学、清末‐明治期の言語・文学・出版。 |
山内祐平 (Yuhei Yamauchi) 東京大学大学院情報学環/学際情報学府 准教授 1967年 愛媛県生まれ 大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程中退、大阪大学助手、茨城大学講師、助教授を経て2000年より現職。 情報技術を用いた学習環境のデザインについて、開発研究とフィールドワークを連携させた研究を展開している。主著として「デジタル教材の教育学」(東京大学出版会)、「「未来の学びを」デザインする-空間・活動・共同体」(東京大学出版会)、「デジタル社会のリテラシー」(岩波書店)、「社会人大学院へ行こう」(NHK出版)など。 |
住所 | 〒153-8902 東京都目黒区駒場3-8-1 東京大学教養学部附属教養教育開発機構 現代GP |
TEL/FAX | 03-5465-8204 (学内内線:4-8204) |
gp@kals.c.u-tokyo.ac.jp | |
Web: | http://www.komed.c.u-tokyo.ac.jp/gendai/ |
担当者 | 東京大学教養学部附属教養教育開発機構 KALS 西森年寿・林一雅 |
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