- 全学体験ゼミナール「『海の森』再生の最前線を体験する」
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本ゼミナールは、8月4〜6日の日程で北海道増毛町にて行われた。日本や世界各地の沿岸海域において、海藻群落が衰退または消失する「磯焼け」という現象に対して、鉄鋼スラグと腐植物質を用いた藻場再生の取り組みが全国各地で行われるようになったが、増毛町は日本で最初にその実証試験が行われた場所である。授業においては、実際の磯焼け現場と磯焼け回復実験が行われている海域を視察し、磯焼け回復への取り組みに触れることを通じて、一般的に環境問題解決のためにはどのようなアプローチが必要なのかを学ぶことを目標とした。具体的には、現地では磯焼けとその回復技術に関する講義、そして磯焼け海域と磯焼け回復実証試験現場の視察と簡単な実験を行った。さらに環境技術導入最前線に関連して、北海道増毛町近辺で行われている環境に配慮したクリーンエネルギーの利用について学ぶことも目的とし、増毛町の北側に位置する留萌市にある10基の風力発電所(風車)の見学を行った。
<第1日目> 本ゼミナールの最初は、留萌風力発電所の見学であった。エコ・パワー鰍フ橋川小幸里さんと留萌市役所企画調整グループの担当者の方に、風車の仕組みや発電量、発電された電気の送電・用途など、丁寧に説明を頂いた。また、真下から風車を眺めただけでなく、740kWの風車の中を見学した。
風力発電所の見学の後は、増毛町に入った。まず始めに、製鋼スラグと腐植物質を用いた鉄分供給による磯焼け回復実証試験が日本で最初に行われた増毛町舎熊海岸の現場の見学を行った。ここでは、鰹a谷潜水工業の渋谷正信社長、増毛漁業協同組合の竹内廣中指導課長の立会いのもと、渋谷社長より舎熊海岸で実際にスラグと腐植物質が入ったユニットが設置された場所や海藻の生育状況などについての説明があった。その後、増毛漁業協同組合に立ち寄った後、宿舎であり2日目の実習授業の実施場所でもある旧雄冬小中学校へと入った。<第2日目>
2日目の午前中は、屋内での講義を行った。この講義においては、山本特任講師による「磯焼けとその対策技術」そして「藻場再生による地球温暖化問題解決への寄与」について講義があった。その後、一番の目的である現地漁業関係者(竹内指導課長)、そして実際に磯焼け回復実証試験の現場作業・調査に携わっている渋谷社長からの講義があった。竹内指導課長は、増毛漁業協同組合における磯焼け対策のこれまでの取り組みを紹介。先進的な取り組みを行ってきた経緯などについて説明があった。次に渋谷社長から、舎熊海岸における実証試験の経緯をはじめとして、潜水士としてのこれまでのキャリア、海洋環境問題へ従事することになったきっかけなど幅広いお話があった。
午後には、増毛町総合交流促進施設元陣屋の見学を行い、再び旧雄冬小中学校に戻り、学生が自分達でサンプリングしてきた海水や河川水などの分析を行い、磯焼けが発生している海域状況についての理解を深めた。夜は、地元でとれた海産物を使ったバーベキュー。 ここでも、 地元関係者の方々と学生との交流が行われた。<第3日目>
最終日は、授業を受けた上で改めて舎熊海岸の見学。その後、実際に船に乗り、海上から舎熊海岸だけでなく、増毛海域の視察を行った。増毛漁業協同組合にて、本ゼミナールのまとめを行った後、大漁旗で作られたハッピを着て最後に全員で記念撮影を行った。本ゼミナールの受講学生からは、「研究がどのように実際のフィールドに生かされているか、その成果はどうなのかを実感できた」、「環境問題を解決するには、現場を見ている人の感覚を取り入れる必要があるし、単一の原因を重視するより複合的に考えていくことが必要であると思った」というような声をはじめ、本ゼミナールで貴重な体験をすることができたとの感想が多く寄せられた。