• 5月13日 海洋環境問題と持続可能社会に向けた対策 (東京大学教養学部 山本光夫特任講師)
  •  「熱の運搬」「二酸化炭素の吸収および排出」「大気中の水蒸気の発生源」――気候システムにおいて大気と同様に大きな役割を担っているのが海洋である。その海洋においても、地球温暖化による海洋環境の変化、沿岸海洋の富栄養化、また残留性有機汚染物質など多くの海洋環境問題を抱えている。
     山本特任講師は専門の「環境工学」をベースに、海洋環境問題の一つである「磯焼け」問題の解決に向けた研究を行っている。この授業においては、代表的な海洋環境問題について簡単に触れた後、特に地球温暖化問題が海洋に与える影響に焦点をあて、ハリケーンの増加という気象変化、サンゴの白化現象を取り上げた後、磯焼け問題へと展開。
     磯焼けの発生には海水温の上昇をはじめ様々な要因が考えられる中、海藻の生長に必要な溶存鉄が護岸工事等の影響で減少していることを挙げ、溶存鉄不足に着目した新しい磯焼け回復=藻場再生技術について紹介。製鉄所からの副産物である製鋼スラグと廃木材チップを嫌気性発酵させて作る腐植物質(堆肥に含まれる)を用いて鉄を供給する方法について、説明が行われた。この方法は、環境問題解決のために工業副生物等を利用し、さらに藻場再生・藻場造成は二酸化炭素の新たな吸収源ともなることから、「持続可能社会」に向けた対策として相応しいものと言えるとのこと。また山本特任講師は、環境問題解決のためには、考え得る原因について包括的に捉え、さらには導入する技術が新たに環境に与える影響を考慮する必要があることを強調した。