• 6月10日 「エネルギー問題の現状と代替エネルギーの展望」(東京大学エネルギー工学連携研究センター 堤敦司センター長)
  •  産業革命以降、世界のエネルギー使用量は増加の一途をたどっているが、有限な化石エネルギーの使用量増加は地球温暖化問題等の環境問題を引き起こすとともに、それに代わる新たなエネルギー源の必要性を生み出している。東京大学生産技術研究所の堤敦司教授は、エネルギー工学連携研究センターのセンター長を務めており、持続可能な産業・社会基盤を構築するために、新しいエネルギー技術戦略の立案やエネルギー・環境研究の工学的な分野での体系化に取り組んでいる。
     講義では、エネルギーに関する豊富な資料を基にした現状と持続可能な生長を阻む要因(環境制約・資源制約・物質循環制約)についての解説がなされた後、持続社会構築のための物質・エネルギー生産体系設計の基本思想として下記の4つが示された。
     今後の展望としては、バイオエタノール生産効率の更なる上昇のほか、サトウキビ栽培を環境対策へも展開する可能性なども語られた。また、新しい環境技術、エネルギー技術等の普及のための要点なども強調された。

       ・コプロダクション(Coproduiction)
       ・エクセルギー再生(Exergy Recuperation)
       ・物質・エネルギー再生(Material & Energy Regeneration)
       ・素材・製品の高性能化・高機能化

     これらの基本思想の説明にあたっては、「エクセルギー」(=仕事として利用可能なエネルギー)の概念をベースに行われた。つまり、「エネルギー消費」は厳密には「エクセルギー損失」であるということであり、この損失をいかに小さく抑え、エクセルギーを再生していくかに今後のエネルギー問題解決の鍵があることが強調された。そして、エクセルギー再生例として、石炭・バイオマスガス化複合発電などが紹介され、プロセスにおいては全体のエネルギーの流れを抑えた上で、部分最適化ではなく全体最適化を行うことの重要性が述べられた。