- □2008年度
- ○開講科目(夏学期)
- 全学自由研究ゼミナール 金曜日 5限 517教室
- 地球温暖化と経済学 山口 光恒(先端科学技術研究センター・特任教授)
- 地球温暖化問題は人類が直面する最大の問題の一つである。しかしこの問題への対処は気象学、工学、法学、倫理学、国際政治学など幅広い学問領域が総力を挙げて取り組まない限り納得感のある解決策が得られない。こうした中にあって経済学もその一翼を担う学問である。
- 2008年からは京都議定書の約束期間が始まるが、京都議定書の機関は2012年までのわずか5年間であり、既に京都議定書以後の国際枠組みの議論が開始されている。従来の公害問題と異なり温暖化問題の対策には経済成長に影響を与えるほどのコストがかかり、しかも温暖化の責任を対策の負担を巡る南北問題が絡み、更に現世代の負担で将来の損害を防止するという意味で世代間衡平性問題もかかわってくる。
- こうした中で大切なことは対策を極限まで実施することではない。対策を打てばうつほど環境的には良いが、反面でコストが急増する。こうした中でどこまで対策を打つのが最適か、これが重要であり、経済学はこの問題を正面から取り扱っている。とはいえ現実には国際政治の中で必ずしも最適でない点に目標が定まることも多い。この場合には所与の目的を最小費用で達成することが目的となる。なぜならこれにより別の対策に比べて節約できた資源を他の重要問題に振り向けることが出来るからである。この点でも経済学は多くの処方箋を用意している。具体的には税や排出権取引といった手法を比較検討することで最善の政策を選択する手助けが出来る。
- この授業を履修することで環境経済学のエッセンスを学ぶことが出来ると共に、現実に起こっている温暖化問題とそれに対する国際的取り組みが理解出来るようになる。
- 地球環境論 木曜日 5限 741教室
- 環境問題と社会の仕組み 丸山 康司(教養教育開発機構・特任准教授)
- 本講義の目的は、環境問題の解決に必要な取り組みを持続的に行うために必要な社会的仕組みを明らかにすることである。
- 環境問題の解決は今後の社会のあり方を左右する課題であり、その重要性に対する疑問は少ないであろう。その一方で、日本におけるエネルギー消費量は高い水準に留まっており、現在でも上昇傾向にある。こうしたことから、環境問題に対する人々の意識をさらに高めることによって、問題解決を図ろうというメッセージを目にすることも多い。だが、環境問題は必ずしも人々の無関心によるわけではない。問題は、解決過程における多様な主体の利害の齟齬である。環境負荷を低減させる際には、経済的負担や行動の抑制を巡る課題が発生することが多く、環境主義的な意識変革のみで問題が解決することは希である。問題は、環境問題の解決という社会全体の利益と、現実社会の個々の局面における各主体の利害とを整合的につなげる社会の仕組みである。
- 現在の社会の仕組みの中では、環境に配慮しない行動が「得」になることが多い。逆にいうと、環境への負荷を下げることが「得」になるような選択肢や、その選択を促すような社会の仕組みが必要となる。
- 以上のように、様々な社会主体が環境問題に対して抱く問題意識や重み付けは多様であることを前提とした上で、本講義では環境負荷を削減する取り組みを非規範的かつ非強制的に進めるための社会の仕組みを明らかにする。具体的には、経済的メリットや社会貢献など、多様なインセンティブを設けることによって、多様な主体の行動を誘発しようとしている諸事例を対象とし、その詳細を明らかにする。効率的なエネルギーの利用を実現する技術開発、問題解決に資する政策・経済システムの工夫、市民の草の根レベルでの社会的仕組みの創造といた多様な事例を取り上げながら、持続可能な社会が備えるべき諸条件も明らかにする。
- テーマ講義 火曜日 5限 523教室
- 環境・エネルギー問題解決へのビジョン〜研究開発の現場から〜 山本 光夫(教養教育開発機構・特任講師)
- 21世紀に入った現在、地球温暖化の問題が大きく取り上げられ、環境エネルギー問題の解決は人類にとって最重要の課題となっている。この最重要かつ困難な問題に対して我々はどのように取り組んでいけばよいのか、また我々の立場でどのように貢献していけるのか。大学生の時代に実際の問題に触れ、考えていくことは重要であると考えられる。
- 本授業においては、環境・エネルギーの研究開発における最前線の話題を学ぶことにより、環境・エネルギー問題の現状を正しく理解するとともに、その解決のためのビジョンを自ら考えていくことを目的とする。環境問題、またエネルギー問題対策技術として、下記の内容を取り上げる予定である。
- 1. 地球温暖化問題
- 2. 大気環境汚染と地球温暖化
- 3. 海洋環境問題
- 4. 地圏環境問題
- 5. ライフサイクルアセスメント
- 6. エネルギー問題の現状と代替エネルギー
- 7. 中国環境問題と石炭のクリーンエネルギー化
- 8. バイオマスエネルギー
- 9. 風力エネルギー
- 10. 太陽電池の研究開発
- 11. 燃料電池技術
- 全学体験ゼミナール
- 「海の森」再生の最前線を体験する 山本 光夫(教養教育開発機構・特任講師)
- 日本や世界各地の沿岸海域において、海藻の群落が衰退または消失する「磯焼け」と呼ばれる現象が生じており、魚介類の減少など深刻な問題を引き起こしている。その原因については様々考えられているが、磯焼け問題の解決のために、多くの対策が試みられている。コンブなどの海藻類はCO2固定効果も期待されており、衰退した海藻群落の再生は単に海洋環境改善と水産資源の回復に留まるだけではなく、地球温暖化問題解決へ寄与できる期待がある。この磯焼け回復に向けて、北海道日本海側にある増毛町では、特に海水中の溶存鉄の不足に着目し、工業副生物である製鋼スラグとバイオマス(腐植物質)を用いた磯焼け回復への実証試験が行われ、現在その継続的な効果が確認されている。
- 本ゼミは、北海道増毛町にて開講する。実際の磯焼け現場と磯焼け回復実験が行われている海域を視察し、磯焼け回復への取り組みに触れることを通じて、一般的に環境問題解決のためにはどのようなアプローチが必要なのかを学ぶことを目標にする。