• □2008年度
  • ○開講科目(冬学期)
  • テーマ講義 月曜日 5限 18号館ホール
  • 環境の世紀14 〜 バイオマスから「環境問題」を考える 〜  瀬川 浩司(先端科学技術研究センター・教授)
  •  地球温暖化をはじめとする「環境問題」は、今や文字通り地球規模の、わたしたち全人類の関心事である。特に今年は京都議定書の約束期間の開始や、北海道洞爺湖サミットの開催などを受けて環境に関する報道も急増し、世の中の環境問題への関心は大変高くなっていると言えるだろう。地球温暖化に限らず、現在の環境問題は政治や経済から、それらを動かす社会、発展する科学技術まで、様々な要素が複雑に絡み合い、「環境問題」そのものがとても興味深いテーマの一つとなっている。実際、駒場ではその興味・関心を満たす講義が、様々な専門分野の先生方によって提供されている。
  •  その中で、学生が企画・運営する環境問題についてのテーマ講義「環境の世紀」※は今年度、環境問題を考えるための一つの切り口として「バイオマス」を選んだ。バイオマスとは、生物由来の再生可能資源のことで、生態系の持続性が保障されれば実質的にCO2を出さないカーボンニュートラルな燃料として使うことができる。そのため、近年国内外で地球温暖化対策の一つとして注目を集めている。一方でバイオ燃料の普及は、食糧と燃料の競合や生物多様性の破壊などの問題を抱えている。一つの環境問題を解決する手段が、既存の社会システムとの複雑な作用・反作用の結果、新たな環境問題を引き起こす。そのプロセスに関わる様々な立場、社会の総合的なシステムを学ぶことで環境問題の多面性を捉え直し、「環境問題」を考えることの面白さに迫ってみたい。
  •  世の中の関心が高まり報道が過熱する一方で、イメージばかりが先行する形で語られることが多くなってきていることも環境問題を考える上で見落とせない。身近に氾濫する情報に流されることなく、「環境問題」とはどのような問題なのか、この講義を受ける中で自分なりの答えを見出してほしい。
  • 特別な前提知識は必要ない。環境問題に少しでも興味を感じている学生は、文理や学年を問わずぜひ受講してもらいたい。
  • 全学自由研究ゼミナール 月曜日 6限 518教室
  • 環境を話す 〜output seminar〜 瀬川 浩司(先端科学技術研究センター・教授)
  •  本ゼミナールは、月曜5限に開講されるテーマ講義「環境の世紀14〜バイオマスから『環境問題』を考える〜」の各回の内容を題材として、近年関心の高まっている「環境問題」をテーマに受講生一人ひとりが主体的にかつ協同で考えるための場を提供することを目的として開講するものである。受講生には、有意義な議論や効果的な発表を目指して自己表現力や情報発信力の向上を図ってもらいたい。同時に、他者との議論を通して、ものごとの捉え方の多様性を認識すると共に、自分の意見を述べ、他者と議論を続けていく大切さを学んでほしい。
  • 総合科目 火曜日 1限 10521教室
  • 環境エネルギー問題解決への工学的実践  山本 光夫(教養教育開発機構・特任講師)
  • 現在、地球的規模で問題となっている環境・エネルギーの課題については、その解決に向けての国際的枠組みの協議をはじめとして、早急に対策を行うための取り組みが行われている。この環境・エネルギー問題の解決に向けては、技術開発だけでなく、政策や経済システムをはじめとした社会の仕組みなど幅広い分野で連携して推進をする必要があると言える。
  • 本講義は、環境エネルギー問題解決のための技術について、その背景と開発の過程、また実際にその技術がどのように実現されていくかを、実例を通して理解することを目的とする。夏学期に開講したテーマ講義「環境・エネルギー問題解決へのビジョン〜研究開発の現場から〜」では、地球温暖化、海洋環境などの環境問題とその対策技術、バイオマス、風力、太陽電池などのエネルギー問題対策技術を、幅広く網羅する形で取り扱った。本講義では、そこで扱ったテーマの中から「中国環境問題」「海洋環境問題」、そして「バイオマス」の3つの話題を重点的に詳しく取り扱うことする。それぞれの課題に対して行われてきている対策技術を一つずつ紹介し、実際の環境対策技術・新エネルギー開発における研究段階から実用化に向けての流れをより深く学ぶことを主眼とする。
  • 全学自由研究ゼミナール 火曜日 5限 107教室
  • 海洋による二酸化炭素吸収について考える  山本 光夫(教養教育開発機構・特任講師)
  • 地球温暖化問題の主要な原因として、大気中の二酸化炭素濃度の上昇が挙げられている。二酸化炭素の排出量を減少させるために代替エネルギーの導入が進められているほか、増加した二酸化炭素を隔離・固定する方法も検討されている。その中で期待されているものの一つが、海洋による二酸化炭素の吸収・固定である。特に四方を海に囲まれている日本は、藻場造成による効果は少なくないと考えられる。現在、日本や世界各地の沿岸海域において、海藻群落が消失する「磯焼け」と呼ばれる現象がある。日本においては全国各地で深刻な問題となっているが、磯焼けによって失われた海藻群落の再生によって、二酸化炭素の吸収・固定量の増加が見込まれる。
  • 本ゼミは、海洋による二酸化炭素吸収・固定量について、文献や実際に行われている磯焼け回復実証試験のデータなどを用いて、藻場造成による二酸化炭素吸収・固定量を実際に評価することを目的とする。またそれにより、環境エネルギー問題解決に向けたアプローチでは、理論やデータに基づいた定量評価が重要であることを学ぶことを目標とする。
  • テーマ講義 木曜日 4限 10521教室
  • 再生可能エネルギーと社会  丸山 康司(教養教育開発機構・特任准教授)・飯田 誠(教養教育開発機構・特任講師)
  • 環境・エネルギー問題の解決を目指した現実の取り組みを幅広く紹介し、総合的な問題解決についての提案能力を養うことを目標とする。具体的な題材としては風力発電を中心的に取り上げ、技術開発から政策まで多様な内容を扱う。
  • 環境とエネルギーの問題を解決するためには、技術と社会が一体となった総合的な取り組みであり、効率的なエネルギーの利用を実現する技術開発、問題解決に資する政策・経済システムの工夫、あるいは市民の草の根レベルでの社会的仕組みの創造が必要である。個人の省エネ意識に訴えることも一つの手段である。だが、これらを個別に応用するだけでは現実の課題に応えるためには不十分である。例えば、新たな技術の開発と導入に解を求めるとしても、そのためには、政策・市場・地域社会との整合性が課題になる。同様に、政策などを進めようとしても、適切な技術が存在しないことが障害になる場合もある。こうした相互規定的な関係を踏まえた上での対策を構想する必要がある。授業では統合的なアプローチの必要性への理解を深め、それを実践に応用する方法を構想する能力を養成する。
  • 総合科目 木曜日 5限 10521教室
  • 環境エネルギー科学基礎概論  飯田 誠(教養教育開発機構・特任講師)
  • 科学技術とは、自然科学分野の領域として捉えられることが多いが、実際には歴史的・社会的背景にもとづく技術研究開発、制度化、国際標準化、社会性など、社会科学分野と密接に関係している。
  • 本講義では、このような異分野に跨る問題の代表例として、環境・エネルギー問題を取り上げ、この問題に取り組むため、理解するための基礎概念、方法論について考える。
  • 環境・エネルギー問題およびその周辺技術は、未だ産業界・学術界においても一つの方向性に集約されていない。それは、地球温暖化をはじめとする環境問題が不確かな要素が多く、また解決策の一つとして風力発電・太陽光・バイオマスなどで代表される再生可能エネルギーシステムが未だ発展途上の技術・社会システムだからである。
  • 本講義は、風力発電を中心とした実際の具体的な事例を紹介しながら、システム開発、導入、運用のそれぞれのフェーズにおいて、課題、考え方などについて技術開発、制度、政策、経済システム、国際的、社会的な取組みについて考え、環境・エネルギー問題を解決していくために必要な視点を身につける。
  • 総合科目 木曜日 5限 534教室
  • 地球環境問題の科学と政治  米本昌平(先端科学技術研究センター・特任教授)
  • 地球環境問題は自然科学と国際政治や産業政策が融合した、新しい形の課題である。とくに地球温暖化問題は冷戦の終焉と入れ替わるようにして国際政治の主題となってきた。だが一方でさまざまな言説が飛び交い、課題の実像が把握しにくいのも事実である。そこで本授業では、気候変動問題、越境酸性雨問題、生物多様性問題、捕鯨問題などについて一連の講義を行った後、これらに関係する重要論文・国際機関の報告書・外交文書などから精選したものを輪読し、これによって、これらの課題に関して、自らの手でアクセスし、読み込み、考えることができるようになることを目的とする。
  • 全学自由研究ゼミナール 木曜日 5限 10522教室
  • サステナブルなキャンパスを構想する  丸山 康司(教養教育開発機構・特任准教授)
  • 環境・エネルギー問題の解決を目指した現実の取り組みに触れながら、総合的な問題解決についての提案能力を養うことを目標とする。
  • 環境とエネルギーの問題は今後の社会のあり方に大きく影響を与える課題であり、その重要性に対する疑問は少ないであろう。その一方で、日本におけるエネルギー消費量は高い水準に留まっており、現在でも上昇傾向にある。
  • こうした現象の理由の一つは、総合的な問題解決の欠如である。環境・エネルギー問題を解決するためには、技術や政策など多様なアプローチが必要となる。だが、これらを個別に応用するだけでは現実の課題に応えるためには不十分であり、個々の対策の特徴を踏まえた上で、これらを整合的に組み合 わせる必要がある。
  • このことを踏まえ、授業では統合的なアプローチの必要性への理解を深め、それを実践に応用する方法を構想する能力を養成する。具体的には、駒場キャンパスでの環境負荷を減らすためのプロジェクトを企画・実行し、その過程の中で問題解決に必要なセンスを養う。
  • ※履修人数を30名に制限する。
  • 全学自由研究ゼミナール 木曜日 6限 10521教室
  • 再生可能エネルギーを通じて環境エネルギーを考える  飯田 誠(教養教育開発機構・特任講師)
  • 環境・エネルギー問題の解決を目指した現実の取り組みに触れながら、総合的な問題解決についての提案能力を養うことを目標とする。
  • 再生可能エネルギー(主に太陽光、小型風力発電)を題材に環境エネルギーを考える授業である。太陽光や風力発電機は、太陽の光や風をエネルギー源として発電を行う機械で、発電時に温室効果ガスを排出しない環境負荷の小さい発電機として、注目を浴びている。風力発電においては、従来、コストの面などから直径数十mにも及ぶ大きさの大型風力発電機が、発電風車としては主流であった。近年、技術の進展により発電用高効率小型風車が登場しつつある。また、太陽光についても同様に世界トップレベルの技術を日本は持っているといえる。しかしながら、自然の太陽や風をエネルギー源としているため、適切な場所に設置しなければ、その機能を十分に活用することはできない。
  • 本授業では、自然エネルギーシステムを適切に利用するための基礎知識・技能を習得することを目標とする。また、本ゼミナールは木・5に開講予定の「環境エネルギー科学基礎概論」の実践版を予定しており、理解を深めることも目標としている。
  • ※履修人数を30名に制限する。
  • 全学自由研究ゼミナール 金曜日 5限 518教室
  • 地球温暖化と経済学  山口光恒(先端科学技術研究センター・特任教授)
  • 環境・エネルギー問題の解決を目指した現実の取り組みに触れながら、総合的な問題解決についての提案能力を養うことを目標とする。
  • 地球温暖化問題は人類が直面する最大の問題の一つである。しかしこの問題への対処は気象学、工学、法学、倫理学、国際政治学など幅広い学問領域が総力を挙げて取り組まない限り納得感のある解決策が得られない。こうした中にあって経済学もその一翼を担う学問である。
  • 2008年からは京都議定書の約束期間が始まるが、京都議定書の期間は2012年までのわずか5年間であり、既に京都議定書以後の国際枠組みの議論が開始されている。従来の公害問題と異なり温暖化問題の対策には経済成長に影響を与えるほどのコストがかかり、しかも温暖化の責任と対策の負担には南北問題が絡み、更に現世代の負担で将来の損害を防止するという意味で世代間衡平性問題もかかわってくる。
  • こうした中で大切なことは対策を極限まで実施することではない。対策を打てばうつほど環境的には良いが、反面でコストが急増する。こうした中でどこまで対策を打つのが最適か、これが重要であり、経済学はこの問題を正面から取り扱っている。とはいえ現実には国際政治の中で必ずしも最適でない点に目標が定まることも多い。この場合には所与の目的を最小費用で達成することが目的となる。なぜならこれにより別の対策に比べて節約できた資源を他の重要問題に振り向けることが出来るからである。この点でも経済学は多くの処方箋を用意している。具体的には税や排出権取引といった手法を比較検討することで最善の政策を選択する手助けが出来る。
  • この授業を履修することで環境経済学のエッセンスを学ぶことが出来ると共に、現実に起こっている温暖化問題とそれに対する国際的取り組みが理解出来るようになる。
  • ※履修人数を20名に制限する。
  • ※原則として、夏学期より受講継続の学生を対象とする。
  • 全学自由体験ゼミナール 集中講義 教室はシラバス参照
  • エネルギー環境実習:建築と環境演習  加藤道夫(教養教育開発機構・教授)
  • 京都議定書以降,地球温暖化を抑えるため,二酸化炭素削減問題が叫ばれている.
  • 本授業では,この問題を広義のサステナブルと捉え,建築環境の観点から考える.すなわち,主としてエネルギー消費の観点から環境と建築を捉え,その基礎知識を習得し,実例検証・見学を通じて将来の生活空間はどのようにあるべきかを考える.
  • ※ガイダンス:一回目は10月8日(水)6限(1224教室)、二回目は10月18日(土)
  • 13時半から16時半に駒場コミュニケーション・プラザ多目的教室で行う。
  • 全学自由体験ゼミナール 集中講義 教室はシラバス参照
  • 地域再生とエネルギー  丸山 康司(教養教育開発機構・特任准教授)・飯田 誠(教養教育開発機構・特任講師)
  • 環境・エネルギー問題に取り組む地域の現実に触れ、環境問題の解決と地域社会の活性化との関係を把握する。具体的には、青森県鰺ヶ沢町での取り組みを視察し、再生可能エネルギーの利用が地域社会にどのような影響を与えているかを理解することを目的とする。
  • 環境とエネルギーの問題を解決するための様々な取り組みが始まっているが、実際には様々な課題があり、設備の導入のみに終わっている例も多い。その一方で、技術と社会が一体となった総合的な取り組みを進め、これを地域の活性化と結びつけている試みもある。成功例は数としては多くないが、自然エネルギーの利用を実現する技術、政策・経済的な仕組みの工夫、あるいは市民の取り組みが一体となって進められている地域もある。こうした取り組みが実際に行われている現場を訪問し、持続可能な社会についての理解を深めることを目的とする。
  • ※履修人数を20名に制限する。
  • ※ガイダンス:10/9 6限に105号館10521教室で行う。